龍雅は綾香と結奈の顔をみるなり下に俯いた。
そして綾香に対して詫びる気持ちでこう言った。
龍雅「済まない、お前の愛する人を救い出す事が出来なかった」
綾香は龍雅の言っている事に一瞬、戸惑いを見せたがすぐに何の事を言っているのかということに気がついた。
綾香「そういえばさっきから隆也がいないんだよ。シェルターにもいなかったし…まさか戦闘に巻き込まれて…」
龍雅は首を横に振った。
龍雅「隆也の身には何も降り懸かかってはいない。ただ…」
綾香「…ただ?」
綾香は不安げな表情で龍雅の顔色を伺った。
龍雅は意を決したかのように綾香の目を真っ直ぐ見つめてこう言った。
龍雅「あいつは、自らの意思で敵側に寝返った…」
綾香は両手で口を押さえて目を丸くした。
そして次の瞬間、力が抜けたかのように地面に崩れ落ちた。
龍雅は綾香の左肩に片手を添えて静かに語りかけた。
龍雅「…ケンカの事はすまないと思っている。まさかこんな結果になるとは…」
その時、綾香の目付きが変わり突如、龍雅に突っ掛かった。
綾香「全部お前のせいだよ!!なんで隆也がこんな目にあわないといけないんだよ!!てゆーかあの時隆也にボコにされとけばこんなことにならずに済んだじゃん!!」
綾香の目には涙が溜まっていた。
その間に結奈が割って入った。
結奈は綾香の両肩を掴み綾香に向かって叫んだ。
結奈「綾香!!今誰かにあたった所でしょうがないじゃん!!隆也が怪我したわけじゃないからまだマシじゃん!!」
綾香は結奈の制止を聞き入れ、再び地面に崩れ落ちた。
綾香「じゃあ、どうすればいいんだよ!!」
結奈は立ち上がり、龍雅の方に振り返った。
結奈「ねぇ、龍雅!!隆也を助け出して!!あいつはムカつくやつだけど、綾香のこんな様子を見ていたら放っておけなくて…」
龍雅も立ち上がり、顔を上げた。
龍雅「もとより、そのつもりだ。俺にも原因があるようなものだからな…。あの男は俺が責任を持って連れ帰る」
龍雅はジーンズのポケットに手を突っ込んだ時、ゲン爺さんに手渡された一枚の名刺の存在に気がついた。
龍雅はそれを取り出すとそれをじっと見つめた。
龍雅「人材派遣サービス『テクノアートインダストリー』?」