そしてゆっくりと119のボタンを押す。しかしあることに気付き、途中で電話を切った。このまま電話をすると僕が犯人になるかもしれない。ここは彼女の家だ。俺が今からこの家を出れば、誰にも見付からずに去ることができる。去るという言い方は変だがそれしか言いようがない。準備が済むと、時計を見て死んだ彼女に手を合わせ玄関へと足を進める。玄関に近付くにつれ変が音が聞こえてきた。僕は振り返り「ひぃ」と声を上げてしまった。死んだはずの彼女が体から血を流し、えぐられた腹からはみ出た内臓をけちらかしながら普通では有り得ない形で歩いて来たのだ。彼女は
「待ってよ……ねぇ………待って…………。」
といいながら徐々に僕に近付いてくる。僕は少しずつ後退りしながら、
「来るな、それ以上近付くな!」
と言い放った。彼女は僕が自分に気があると本当に思っているらしく、
「なんでよ……私達、恋人同士でしょ………………?」
と言った。
僕は怖くなり、勢いよく玄関のドアを開けると自分の家に向かって走り出した。