空を見ると思い出す…
―あなたは幸せでしたか?
半年前、私の父は死んだ。
ガンで死んだ。
ずっと前から、身体の具合が悪かった。それに気付かなかった。いや、ずっと訴えかけていたのに…気付いていたのに…皆、たいしたことないって…そう思ってた。
でも、違った。
全然、体調はすぐれなくて。それで、やっと病院に行ったんだ。
学校から家に帰ると母がいた。
――お父さん、ガンだって……
ただその一言。
ガン?ガンってなに?だって、元気だったじゃない。笑ってたじゃない。
そんな訳ない。ガンなんかじゃない。
そう、自分に言い聞かせていた。
…お父さん、治るよね?
私がそう言うと、母は泣いた。
3ヵ月。
それが、父の余命だった。
頭が真っ白になった。
父がいなくなる…
涙はでなかった。
入院生活はひどかった。
薬の副作用で、だんだん、弱くなっていく父。
そんな父を見るのが辛かった。
だんだん、正気を保てなくなっていく。
ねぇ……
お母さんの事分かる?
おばあちゃんは?お姉ちゃんは?お兄ちゃんは?
……私は?
嫌だよ。私の事見てよ。名前呼んでよ。お父さんがつけてくれたんでしょ?私の名前。
毎日のように、
ここは何処?って聞いてくるの。
ここは病院だよって。
いつもは、これだけで会話は終わっていたのに…
退院したい……
そう言った父は、泣きそうで。
私は初めて泣いた。
1番辛いのは父で。
私は何も出来なくて……
その数日後、父は死んだ。
ねぇ、お父さん。
お父さんは幸せだった?
お母さんと結婚して、お姉ちゃんとお兄ちゃんと私が産まれて。
私は幸せだったよ。お父さんとお母さんの娘で。
ねぇ、お父さん。
お父さんと過ごした日々が忘れられない。
だから、お父さんのメールは消さない。お父さんが生きてた証だから。
ねぇ、お父さん。
私、毎日空を見るよ。
お父さんが好きだった空を。
忘れないよ。
大好きだよ。お父さん。