いつもと変わらない夜のはずだった。ただ違うのはほんの少し月が蒼かった事と、消えてしまいそうな君の存在。眠れない…寝たくない…寝るのがもったいない。理由は人それぞれだけど、私は夜が好きなナイトウォーカー。いつもの場所にいけば、名前も知らない仲間が空が色付きはじめるまで、話続けてる。
意味なんて無い…ただ自分の居場所や存在を感じていたいだけ。色んなナイトウォーカーはいるけど、みんなどこか…見えない壁を作ってるのは一緒。
踏み込んではいけない。壊してもいけない。それがナイトウォーカーのルール。
でも、あの日の君にだけはそのルールが守れなかった。
近付かないと見えなくなりそうで…見ていないと消えてしまいそうで…
ナイトウォーカーには名前は必要ないけど、友達って雰囲気がみんな好きだからみんなNN【ナイトネーム】で呼び合ってる。
自分で言う人もいれば、誰かがつけた人、自然になってた人もいる。
【クロ】が私のNN。いつもモノトーン系の服装ばっかだからだろう。
はじめは嫌だったけど、今は響きが心地いい。
消えてしまいそうな君のNNは【ハク】誰も意味は知らないけど、気付いたらそう呼んでた。
【ハク】は自分からはあまり話さない。いつも誰かの話を笑顔で聞いてる。
私も【ハク】に話すのが好きな一人だった。
くだらない話でも、泣きたくなる様な話でも優しい笑顔で受け止めてくれる。
ただ…月が蒼い夜だけは【ハク】が珍しく話ていた。
みんなそれに驚いて自然に集まっていた。
「生まれてきてはいけなかったんだ…」
それが【ハク】の一言目だった。
「どうして?」私が聞き直すといつもの笑顔で
「意味がないから…この手は何も作れないし、傷つけるだけだから」
普通なら相手に干渉しないルール。
でも【ハク】の言葉が次々に闇に消えていくのが不安になった私は聞いてみた。
「ハクはどうしてそう思うの?」
【ハク】は笑顔で
「君は僕がどう見える?」
逆に聞き返されてしまった。
「ハクは…いつも優しくて…ん……」詰まってしまった。
「ナイトウォーカーの僕しか知らないからね。本当の僕は…」
【ハク】の言葉が詰まる。
「本当のハクって?」私が聞き返すと【ハク】は小さな声で囁いた。