ピンポーーン、、
「開いてるよ、、。」
日曜日、私はまた彼のアパート前にいる。
中から聞こえた声の主も既に判っている、、ドアを開け中へ。
彼が霧吹きで植物達に水を撒いている、、「いらっしゃい、、」相変わらずの空っぽの表情で私に笑みを向ける。
どうしてあなたがココに、、彼は水を撒き続ける。
「植物って綺麗だよね、、様々な表情をしてて。手をかければ掛けた分ちゃんと良い顔をしてくれる。
羨ましいね、、エミさん、、。」
何が言いたい、、。
「エミさんとは前から同じ臭いがしててね、凄く興味をそそられてさ。だからさりげなく観察してたんだ、、。」
水撒きを終わらせた彼は台所へ、、珈琲を煎れ始める。
「エミさんて、心の底から笑ったことある?
知ってると思うけど僕もなんだよ、、そーそー!感情が欠落してるんだよね。」
二人分のカップを手に植物達に囲まれ、彼は座り込む、、「大丈夫。睡眠薬は入ってないよ♪」
全てを把握しているかのようだ、、。
彼の音以外は全てが黙り、金縛りのように私の体は動かせないでいた。
「ココにいた屋主、、気になる?
彼は彼女のもとにいるよ、ずっと、、」
笑顔のまま淡々と彼の独り言は進む。
「確かエミさんは『哀の欠落』つまり泣けないんだよね、、
僕は『道徳の欠落』人をあやめても何も感じない。
料理と同じ感覚かな?魚を捌くみたいな、、」
この場にいるのが怖い、、珈琲は湯気と混ざりながら深い臭いを部屋に染み込ませる。
普段は癒してくれるこの香りも、今は黒く私を支配していく、、何か言わなければ、、。呑まれてしまう。何か、、
「僕、、エミさんのこと好きだよ、、。」
、、!!突然の告白、、なぜ今!?、、首を振り「私はわからない」と、乾く喉で精一杯の声。
「そっか、それだけ伝えたかった、、」
言葉最後に彼は横に、そのうち寝息を立て始めた、、。
、、呪縛から解放された私は震え、いうことを利いてくれない体をいじめなんとかアパートを後にする、、
嫌な汗と、困惑のまま私は電車に揺られる、、
ポケットに入っていた紙をもう一度読み返す、、
『ポツリッ、、』
、、!!紙に透明な染みができ、初めて泣いている自分に気付いた、、。
景色と今までの自分が流れてゆくのがなぜか切なかった、、