フミと過ごした時間の中で忘れられない事が2つある。
1つは人生で初めてセックスした事。
もう1つは、初めてのホワイトデーだ。
どちらも私の心に深く残っている。
1つ目は付き合って3ヶ月くらいだったろうか。それまで彼が私の体を求めたり、言葉で誘う事は無かった。私は自分の体に自信があったわけでもなく、その行為そのものが無くても満足だったのだが、20歳を越えて未だに経験をしていないことに焦りを感じていたため、少し不安でもあった。
キスは何度もしているし、抱きしめられる事もしばしばあるのに、その先へ進めないもどかしさを私は感じていた。
それは帰り際での事だった。
「もっと一緒にいたい。リカに門限がなかったらいいな…。」
フミがそっと呟いた。私の頭の中はグルグルと回り出した。
「今度お泊まりしようよ」
こんな言葉を出したら引かれるんじゃないかとか。
「仕方ないよ…。今でも充分だよ。」
この言葉でまたフミと深く繋がるチャンスをダメにするのか。
私が出した答えは
「私も一緒にいたい。フミをもっと知りたい。」
この言葉が精一杯だった。
フミはやけに真面目な顔をして、一緒にもっと長く過ごせるよう、親を説得してくるようにと私に言った。
その何日か後に私たちは朝まで一緒に過ごした。
私は全身でフミの唇と体温、切ない吐息、甘い痛みを感じた。
なぜ人が交わろうとしたがるのかがこの日、わかった気がした。