「ほらぁ、笑ってよ。」
シャッター音が鳴っても仏頂面の俺に、ユカリが笑いかけた。
「いや。」
「子ども〜。」
「ぅるせっ!!」
言い合ってる間も、シャッターはきられていく。
時間内に沢山撮れるやつらしい。
こんなに撮ったら選ぶのが大変そうだ。
「アップしよアップ。」
グイッと俺の肩を押しカメラに近づくユカリ。
顔に柔らかい巻き髪がかかった。
「ちょ……ユカリ髪こしょばぃ。」
「あ、ごめん。」
ユカリがフワッと髪をかきあげる。
俺の右側にいるユカリ―――綺麗な横顔に一瞬目を奪われてしまった。
「どうしたの?」
「え?あ…別に……。」
慌てて反らした目の端に、なにか違和感を感じて――
あ?
今………なかった?
もう一度ユカリを見る。
カメラを見つめる無邪気な瞳と、真っ白な頬と、ゆるやかに微笑む唇――――そして、左耳。
ピアスが……ない?
いつも紫の石が光るその場所には、小さな穴があいてるだけ。
思わず手を伸ばす。
「リョウ?」
ポカンと見上げてくるユカリにかまわず、髪をかきあげながら耳朶に触れた。
ない。
マジでない。