「サラ・・・」
誰かが呟いた時にはもうすでに彼女はソファのすぐ近くまで来ていて・・・跳んだ。
「ロン〜おっはよぉ!」
ロシアンが事も無げに少女を受けとめる。ロシアンの腕の中でゴロゴロとじゃれつく姿はまさに犬猫そのものだ。
「おはようサラ。ココアで良いですか?」
ジルファの問いかけにサラは素早く顔をあげた。
「おっはよぉ!うん!ココアが良い〜ありがとジルファ♪」
サラの笑顔は見る人全ての心を和ます力があるのか、レイラの表情がゆるむ。
「サラ、どこ行ってたの?」
「おさんぽぉ。」
サラは答えると大きな瞳をうるませて続けた。
「でねでねぇ。サラすんごいお願いされたのぉ。すんごい楽しそうなのぉ。」
「お願いって・・・依頼?」
「すげぇ楽しそうってどんなの!?」
レイラがポカンと、ハレがウキウキと訪ねる。しかしサラが答える前にロシアンが口を開いた。
「あんたが依頼主か?」
ロシアンの視線の先、開かれたままの扉の向こうに人影が一つ。
あったのではない。来たのではない。
現れたのである。
ロシアンの問いかけに答えるように突如として現れたのだ。
「あら。気付いてらしたの?気配を消しておりましたのに。」
間延びした声に驚きを加え、女が入ってきた。少しふくよかな体型で、年は三十代くらいであろう。愛らしい柔らかな顔付きをしたおしとやかな女性。着飾っているわけではないのに自然と感じられる気品は生来のものだろう。彼女はエマと名乗った。
「レイクウェストから参りました。」
「レイクウェスト〜!?」
レイラとラスタが同時にすっとんきょうな声をあげる。
「どこ?それどこ?」
「大陸最西端よ!アランジスタからは馬車でも10日はかかるわ!」
「こんなとこまで・・物好きだねぇ。俺には絶対無理。めんどくさい。」
「あんたは黙ってなさい!」
レイラがラスタを一喝する。その間にジルファは特性ミルクティを完成させた。
「この寒いなかさぞ大変だったでしょう。こちらをどうぞ。」
「まぁ、ありがとうございます。」
にこやかにカップを受けとるエマを半眼で見ながら、ロシアンが静かに口を開いた。
「で、用件は?」