誰かが幸せになった分
誰かが我慢するような世界は望まない。
貴方の傷跡が露見して
それに触れてしまった。
突然、背後からの抱擁。
耳元で聞こえる涙。
何も出来ない自分。
貴方は傷が痛いと泣き出した。
流れたものが
僕に染み込んで
また別の傷が生まれる。
世界の理不尽さを知った夜。
それでも言葉が出ない無力さが憎いよ。
魔法みたいな力じゃなくていいから
この人を護る何かが欲しい。
あぁ、苦しいんだな。
なんとかしなきゃ…。
雨が降りだした。
タイミングが良いな。
神様が僕らを見ているのかな。
妙に、客観的だ。
世界が小さくてなって
全てが希薄になった。
思わず僕は
抱きしめ返した。
こんな行為で
全ての柵を綺麗に
流そうとする僕が憎い。
あの夜は、もう幻。
だけど傷跡は……
僕の胸にある……。