それから。
簡単な身体検査と身元確認の後、指紋をとられ、俺は取り調べ室に放り込まれた。
護送される途中、幾度も刑事さんに詳しい状況を尋ねてみたが、答えは返ってこなかった。
俺が容疑者だと言うのなら、それも仕方ないのかもしれないが…。
いや俺あくまで重要参考人。
陽の当たらない狭い部屋。
もう二度と来たくはなかったんだが…。
「とっとと座れ!」
おっかない刑事に急かされパイプ椅子に座らされる。
「で、自白する気は?」
前置きも無し。
文脈をはっきりさせてから質問して欲しい。
「ねぇよ」
萎縮したら負けだ。
連中のやり口はわかっている。
それはかつて俺達が忌み嫌った前時代的な方法。
こちらの自尊心を殺して抵抗する気力を奪い、そして自白を誘うのだ。
それを理解していれば、耐えられる。
耐えれば、無罪を認めさせる機会はある。
「…立場をわきまえろよ容疑者」
俺の後ろにいた警官が、椅子を軽く蹴ってきた。
やっぱり容疑者扱いだったのか………。
誰だよ。こんな気まぐれな正義の味方に国家権力と社会的地位を与えたのは。
「聞いたとこ、お前と祐一さんは仲が悪かったんだろ?」
どこで誰に聞いたんだろうと良く思う。
「なんであんたにそんなこと詮索されなくちゃならないんだ?」
しまった、つい本音が。