中井さんは、いったい何を言いたかったのか。
それについては、すぐに検討がついた…
優しい彼氏。ヒロには二面性があった…いつもは、優しく何か失敗しても、励ましてくれる心の広い彼だ。
私は、それが彼なのだと信じた。いや、信じたかった―\r
彼と付き合って3ヵ月になろうとしている時だった。
その日は、風が強く雨は激しく降り、台風が東京を覆っていたと記憶している。
傘をさし、彼との待ち合わせにいつも使っている小さな喫茶店「マロン」へと向かっていた。
大通りを歩き、突き当たりを左に曲がって近道をすれば、マロンに早く着けると、雨に対してイライラしている自分がいたと思う… 近道の道は、普段から狭く傘をさしていては、人1人通るのが、やっとと言う道。
こんな雨の日に人は、向こうから来ないだろうと、その道を曲がり歩き出した。
少し歩くと、誰かが傘を壁に立て掛けて、うずくまっている。
遠目でも、男性だと分かった。(いやだ…うずくまってるから、通れない。。)
道は狭い為、男性のせいで塞がれている状態であった。
でも、近道だし引き換えすのは、面倒だと思った私は、そのまま歩きだす。男性に近付くにつれ、誰だか分かった。
ヒロだ…何しているんだろう?
私は、興味本意でゆっくりと近付き…私よりも若い18歳くらいの男の子を殴りつけていた。
後ろ姿で雨によって、音をかき消されたのだろう…全く近付くまで、分からなかった…
止めようと彼の肩に、手を置き振り返った彼の顔は、私の知っている彼では、なかった。
そう…彼の二面性。