ある日、池に財布を落とした。
あまり深い池ではなかったので、手をいれてみた。
もしかしたら見つかるかもしれない。
池は林で囲まれていた。とても暗い。片方だけの靴が水面に浮いていた。
手に何かがあたった。試しにそれを掴み出してみる。
片方だけの靴だった。水面に浮いているのと同じ物だった。
誰かが落としたのだろうか?
もう一度手をいれてみる。水が僕の手をゆっくりと包む。
その時だった。何かが僕の手を掴んだ。絞めつけられる。水面が揺れる。
「だっ…誰かぁっ!!!」
叫び声は林に吸い込まれていく。水の中を見てみる。白い手が僕を掴んでいる。ものすごい力で僕を池の中へ引き込んでいく。僕は必死に抵抗する。
「やめろっ・・・やめろぅっ!!」
………
そこで僕は夢から覚めた。起き上がり新聞を見ると池から女性の死体が発見されたらしい。
僕の手には掴まれた跡があった。みっちりと赤く残っている。
財布はどこにもなかった。 等式