抗癌剤治療が近づいて来た。
麻衣は、深いため息をついていた・・
首筋にヒヤっと冷たい感触をした時、大きな声を出して立ち上がって
顔が真っ赤になった。
その姿を見て、貴浩は笑っていた。
「脅かさないでよ」
麻衣に缶コーヒーを渡すと、笑いながら
「ごめん、ごめん。麻衣が落ち込んでたから、元気つけようかと
思って」
そう言うと、麻衣の隣に座った。平日の待合室はとても静かで
暖かい日差しが照らしていた。
貴浩のある物に気づくと
「あれ・・なんで今日は私服なの?いつもは制服じゃん」
「今日、学校休んだ。一秒でも多く麻衣のそばにいたいから」
貴浩の言葉に麻衣が、顔を赤くすると
「うん」
と答えると、強く手を握った。
このまま、時が止まってくれたらいいなぁ。。こんなにも幸せな
時間があるのに−・・神様はイジワルだよ。
そう思うと、麻衣が涙を流してしまった・・
麻衣が涙を流している姿を見て貴浩が驚いたが
そっと、麻衣の頭を肩に置きたった一言
「泣き虫だな、麻衣は」
「だって・・すっごい幸せなんだもん」
その言葉には、嘘がなかった。麻衣の言葉の通り幸せな時間が
いつまでも続けばいいと何度も思っていた。
「好きだよ」
麻衣の涙を指で取るとそっとキスをした。
いつもより長いキスをすると、何度もキスをした。
お願いです。神様−・・どうか、このまま時間を止めて下さい。
ずっと、好きな人のそばにいさせて下さい。