巳夜(みよ)ちゃんの夢は何ですか?
昔、まだ私が保育園に通っていた頃、そう訊いた人がいた。
その人が誰だったのか、保育園の先生だったのか母親だったのか父親だったのか、それとも全く知らない人だったのかは忘れてしまったけれど、とにかく、私にそう訊いた人がいた。
私の、夢。
私の夢は――
あの時、私はその人に、その質問について何かを言ったと思う。
それが質問の答えだったのか疑問だったのかも忘れてしまったけれど、とにかく、私はその人に何かを言った。
巳夜ちゃんの夢。
それはつまり、私の夢。
あの時、私は何と言ったのだろうか。
私は昔からお母さん子だったので、もしかしたらお母さんがその《人》なのかもしれないと思い、訊いてみた。
するとやはりお母さんは、そう私に訊いたことがあるそうで――別にこれは私の母に限ったことではなく、うち以外でも大抵の母親が、一度くらいは自分の子どもに同じ質問をしているはずで……まあ、とにかくそういうことがあったらしい。
私はずいぶんと好奇心旺盛な子どもだったそうだ。
私自身は全く覚えていないのだが、その好奇心は、変なところに向いていたらしい。
巳夜ちゃんの夢は何ですか?
今はもう“巳夜ちゃん”などとは呼んでくれないのだが(別に呼んでほしいとも思わないし)、それはさておき、そうお母さんが私に訊いた。
すると私は好奇心に満ち満ちた、キラキラと光る目をして、こう言ったそうだ。
そんなこと訊いてどうするの?
/The child is a strange person.
- FIN-