僕はすぐに家に帰り、布団に潜り込んだ…母さんの目を見るのが怖かったのだと思う。
心配して母さんが何度か様子を見に来た。しかし僕は寝たフリをしてそれをやり過ごした。
脚が不自由な母さんは何もできずに見守ることしか出来なかった。
その姿はとても不憫なものだったろうがその時の僕は母さんが笑っているのではないかと怯えていた。
その夜父さんが僕を起こした。
「一体どうした?父さんに話してみなさい。」
僕は父さんの目を見た。
とても真剣な眼差しで僕を見つめていた…闇の欠片もないその澄んだ瞳は僕の顔しか捉えていなかった…
僕は父さんの目を見て安心すると同時に涙がドッと溢れ出した。
そして全てを話した…
…女の子の頭を撫でたら彼女の悲しみが頭の中に流れ込んだこと…
…その後、彼女は悲しんでいなかったかの様に去って行ったこと…
…そして彼女と母さんの笑った時の目が闇そのものだったこと…
全てを話し終えた時、父さんは深く考え込んだような顔をしていた。
どうせ信用なんかしていない…僕はそう思った。
しばらくして、父さんが静かに口を開けた…