優希は、航と外に出た。
しばらく、無言であてもなく歩いた。
「…ごめん。わざとだよ。」
優希が先に口を開いた。
「ん。知ってる。」
「…じゃあ、放っておいてくれればいいのに…。」
「無理だよ。それは。だって俺」
言いかけた言葉を阻んで優希は言う。
「航くん、なんで私、最近あの場所に行かないかわかる?」
「部活引退して、受験勉強してるから…?」
「違う。甘えさせてくれる彼氏ができたから。あの場所はもう必要ないの。」
「…わかった。」
半分は嘘だった。それでも、優希は心にかかったモヤモヤが少しは晴れた気がしていた。
1月。
推薦入試を終えて、合格発表を控えた優希は、カレンダーの前にたたずんでいた。
生理が遅れている。
開始予定日を3週間過ぎていた。
今までも、一週間ほどのズレは何度もあった。
受験勉強のストレス…?…
思い当たる節は他にもあった。
あれからも、何度か圭吾とラブホテルに行った。なん度か避妊をしなかった。
優希は、頭が真っ白になった。
…妊娠……?…
いや、ストレスかもしれない。
落ち着け。
自分に言い聞かせた。
数日後、発表の通知が自宅に届いた。
《合格》
優希は、第一志望の私立大に合格した。
進路は決まった。
携帯が鳴る。
圭吾からだ。
「もしもし。圭吾?」
『結果、届いた?』
「うん。受かった。」
『おめでとう。これから会お。お祝いしよ。』
「うん。」
優希は、今自分が抱えている問題を、圭吾に話すつもりはなかった。圭吾は来月受験を控えている。余計な事は考えて欲しくなかった。
「優、ラブホいこ。」
会うとすぐに圭吾は言った。
「ごめん。…今日は…」
「アレの日でも、俺は構わないよ?行こ?」
「ごめん。今日は帰る。」
「優?どしたの?何か怒ってる?」
「ううん。何か、風邪気味みたい。帰って寝る。」
「そっか…。じゃあ、送る。」
圭吾にとって私は、セックスをするだけの相手なのだろうか。
とても、胸が苦しくなった。
でも、そう思っていたのは私も同じだった?