航宙機動部隊第二章・10

まっかつ  2007-04-24投稿
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しかしその感慨が覆されるのに、僅か五00Mも歩く必要すらなかった。
同じ区画の公園に差し掛かったリクは、一群のデモ隊に出くわした。
反太子党で集った人達であるのは言うまでもない。
たまたま帰り道と重なったので、別に気にする事もなく入口から噴水を抜けようと彼等の中に観戦武官が紛れこんだ時―\r
悲劇が起こった。
やや遠くから何発もの乾いた破裂音が鼓膜を打ち、噴水の辺りを占していた百人余りのあちこちから、悲鳴と絶叫がこだました。
火薬銃だと、とっさに判断した少年は、反射的に身を伏せて怪我は無かったが、それから二0秒と置かずに又しても銃声の連射が一帯に轟き、複数の血しぶきと苦痛とうめき声が湧き上がる。
(くっ…何てこった、こんなにも早く、太子党が!?)
自分と同じ様に、赤煉瓦敷に寝そべった人々に混じりながら、観戦武官は狼狽しながらも素早く腰元のホルダーからハンドレイを引き抜き、目の前に持って来てエネルギー残量を確認した。
すぐさま安全装置を外し、うつ伏せのまま赤煉瓦畳に左手をついて、ゆっくりと顔を上げると、視界に入った光景にリクは思わず息を凍らせた。
雑魚寝の姿勢がどこまでも続き、辺りにはプラカードや襷の類が乱雑に散らばっている。
そして、ざっと見回しただけでも、七〜八人が不自然な姿勢で倒れたり、衣服に焦げ付いた穴が開いていたり、血を流したりしているのだ!
どれだけの負傷かはすぐには分からないが、最悪即死者まで居るかも知れないと想像して、リクはぞっとなった。
(こんな所でテロが起こる何て…)
余りの事態に頭がぼうっとなりながらも、パネルカードを懐から取り出し、連合艦隊司令部及び船内警備に緊急通報を入れる。
そして、再び辺りを見ようと上身を反らすと、赤煉瓦畳みを等円形に囲んで厚目に植えられた並樹の陰から、ライフルを肩に下げた四人の男達が姿を現し、こちらに向かって歩み始めているではないか。
そして自分と彼等の間には、仰向けに倒れて動かないままの女性に、泣きじゃくりながら子供がすがっているのだ。
最悪な事に、連中はその様子に気付いた。
そして尚近付きながら嗜虐的な薄笑いを浮かべ、その中の一人がライフルを構えて、その子の頭部に照準を当てたのだ!
『!いやめろおぉぉぉっつ!!』
絶叫して起き上がったリクはハンドレイの引き金を引いた。

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