負けられなかった。なかっちゃんのためにも…。
時計が後半40分をさした。
僕らには最後のチャンスすらないのか。
2対0…二点差。追いついて見せる!
僕はがむしゃらにドリブルを続け、心の中で叫んだ。こんなヤツらになかっちゃんの気持ちが分かるか!こんなやつらに!その時だった…ガッ!うぐ……『ピー』主審の笛がかわいた空に響き渡った。
僕の右足に激痛がはしった。
痛かった。本当に。
体のあちこちで痛みが飛び跳ねている。
大丈夫か、と心配して仲間達が駆けつけてきたが彼らの声は痛みに呑まれ消えていく。
なかっちゃん、なかっちゃん…
僕は立った。
主審が叫んだ。
ペナルティキック…今までに何度となくこの試練を乗り越えてきた。
だが今日は違った。
唇が微かに震えている。
なかっちゃん。
僕が…
『ピー』
ダッ…地面を踏み込んだ。
僕が…僕らがなかっちゃんを天国へ導いてやるから!
素早く振った右足に慣れた感触が走る。
そのまま一直線に蹴り上げた。