とりあえず電話をしてみる。
「おかけになった電話番号は現在使われておりません」
「ちょっと待ってください」驚きのあまり電話の向こうから自動的に流れる声に向かって叫んだ。ホントにちょっと待ってほしい。
彼女に最後に会ったのは三日前。
ぐるっと部屋を見渡してもそれは間違いない。
夜中に一緒に見たガキつかのDVDはデッキに入りっぱなしだし、僕が気に入って買ったのにいつの間にか彼女が泊まりに来た時用のパジャマになってしまったレゲェのスエットも脱ぎ散らかしてあるし、ポッキーをつまみに飲んだジーマや、ピナコラーダの空き瓶も転がっている。そこは恋人らしくポッキーゲームもしたし、僭越ながらその流れで盛り上がって二回致した。妄想ではない。
これが妄想なら僕は犯罪を犯す前に自ら病院に入る。
とてもじゃないけど納得いかないので彼女の家まで押し掛けることにした。
爽やかな春の風を感じながらチャリンコをこいでいるといつものイタズラなんじゃないかと思って気持ちが軽くなった。