八月一日。夏休みに入って一週間がすぎた。
アキヒトは今日も、電車に揺られて旅に出る。旅とは言っても、定期券で隣の隣の町まで行って、地元より少しだけ都会な街並みを眺めながらぶらぶらするだけ。
普段運動しないから足は筋肉痛になるし、夏だから汗だくにもなる。帰りはいつも
「なんで来たんだろう」
と言う気持ちになる。
でもアキヒトは毎日…いや、一日おきぐらいにここに来る。なぜかって…
アキヒトが毎日のように旅に出る本当の理由は、「出会い」。
18歳。高校最後の夏休み…今まで女の子と付き合ったことのないアキヒトは、今年こそ彼女を作ると決めたのだ。
しかし、小学校以来女の子とまともにしゃべったことのないアキヒトにナンパなんかできるわけもなく、そんな内気な地味ボーイに声をかけてくる女の子もいない。当然、漫画の様なロマンチックな出会なんかあるはずが無い。
「甘くねぇな…みんなどうやって彼女作ってんだろう…部活のマネージャーとかかなぁ?あぁ…部活やっときゃよかった…チクショー…」
毎晩考えるのは同じこと…
しかし、出会いは突然やってきた。