それは、夏休み中盤の登校日のこと。
なんで夏休みのまっただ中にテストなんか…と、眠い目を擦りながらも、女の子の目を気にして、髪の毛はキッチリセットし、電車に乗った。
隣の学校もテストなんだ…制服だらけだ…人混みは苦手。全員に見られてるような気がする。ボックス席の窓際を陣取って、寝たふりをし、あるはずのない視線をやり過ごした。
誰も見てない。誰も見てない…でも、少しでも女の子と目が合ったりすると、ドキドキしてしまう…なんてピュアなんだ俺は…
そんなことを考えてる内に、やっと駅についた。アキヒトは、立ってる奴らが降りて、ドア付近に誰もいなくなってから立ち上がった。
「あの…」
「え?」
「これ…読んでください…」
「あ…どうも…」
手紙を渡された…産まれて初めて…冷静なふりをしつつも、心臓は飛び出しそうだ。なんで俺なんかに…同級生に見られてたらどうしよう…
ていうか、年下だよな…うわぁ…どうしよう…可愛かったけど…
手紙には、名前とメールアドレスが書かれていた…
「○×高校二年のゆきです。よかったらメールください…」
アキヒトに春が来た。