淡い泪 ?

ルイン  2007-04-25投稿
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一体どのくらいの時間が過ぎたのかはハッキリとは覚えていない。ただ、太陽が眩しいくらいに赤く傾いていた。

目を醒まし、辺りをみわたすと乗り込む直後にいたはずのサラリーマンと夫婦はいなくなっていた。いるのは僕と隣の女子だけ。乗り換えの駅まで残すところあと二駅。気分が冴えないまま目を閉じ、電車の発車ベルを待った。

 ガタンッという列車の動きで横に体重がのしかかってしまう。その時、ふと気付くと隣にいた女子が自分の肩にもたれてきた。僕はビックリしてすぐに目を開ける。どうやら寝てしまっている様だった。

今までにそんな経験も無く、無駄に緊張してしまう。人生で一度として女子と仲良くしたことがない。ましては体を寄せ合うなんて………
うれしい反面どうしたらよいのかがわからず、そのまま寝かせることにした。彼女の熱が肩に染み渡ってゆく。恥ずかしさで彼女の顔を見る事すら出来ない。

しかし妙に熱くはないか? そう気が付いたのは5分も経った頃。しかもなんだか息が粗い……。恐る恐る彼女の顔を覗き込んでみる。すると、真っ赤な顔をして汗だくになり、苦しんでいる彼女の顔がそこにはあった。

「えっ………」頭がパニック状態だった。一分程真っ白になっていたらしい。気が付くと車内アナウンスが流れ、駅への到着を知らせている。「どっ……どうしよう……」

まず頭に浮かんだのは水分を与えること。しかし、今手元にあるのは飲みかけのスポーツドリンク、試合のために自分で買ったものだった。すぐにラケットバックから取り出し、蓋を外す。その時、一瞬手が止まった。彼女が苦しんでいるというのに、今自分の飲みかけを見知らぬ人にあげていいのだろうかと悩んでいた。今思えばそれは何と言う馬鹿らしい考えだったのだろう。

 そんな考えを振り払うかのように電車が大きく揺れる。我にかえり直ぐさま口元にペットボトルを運んでゆく。彼女は最初は抵抗したが、それが飲み物だとわかるやいなや一気に口を開け喉を鳴らしながらグビグビ飲んでゆく。しかし状況が変わる訳ではなく、一方に苦しみ続け……。



車内には僕一人、自分がやるしかないんだ。とゆう使命感を心の内に言い聞かせながら電車が駅に着く時を待ち続けた……。

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