優希は、航にあの話をした後に、とんでもない事を、正希に聞いた。
N高はサッカーの名門校で部員は全部で80人。全国大会にも3年に一度は出場している学校らしい。
「俺が行くK高とはライバル校だから、二年後には、航と勝負できるな。」
「…レギュラーになるのに二年かかるって事??」
「当たり前だろ…1年生は筋トレとグランド整備がいいとこ…だな。2年になって控えに入れればラッキーだよ。」
とんでもない事を言ってしまった。
航の彼女になれる日は来るのだろうか…
それでも、あの夜、航は私に言ってくれた。
「待ってて。必ず、優希に俺の勇姿を観せるから。」…と。
今、ここで、あんな約束やめて今すぐ付き合おうと言う事だってできる。
それでも、優希は信じたかった。
そして、航が成長する間に、自分にも磨きをかけたいと思った。
いつかくる、その時に、航に見合う女性でいる為に。
《航、高校生活はどうですか?》
優希からのメールに気がつく事なく、航は爆睡していた。
毎朝、朝練が7時から、その前に2時間、航はロードワークをし、自主練習する。放課後も20時まで練習…といっても、1年生はロードワークと基礎トレーニング、グラウンド整備だ。終わった後、一時間ほど自主練習をし帰宅、その後に、自宅側のグラウンドで夜中までシュート練習にうちこんでいた。
優希からのメールに朝気がつき、返信をする。
《うん。楽しくやってるよ。》
優希は、メールをみてすぐに返信した。
《ゴールデンウィークも練習あり?たまに遊ぼ?》
《ごめん。休みなしだ…。夏までは完全に無理だな……ごめん!》
《大変だね…。夏の大会終わったら、レギュラー入れ替えだもんね。頑張れ☆》
入部したての頃は、紅白戦でも、2、3年生に歯が立たなかったが、夏前にもなると、手応えが出てきた。
自分に少しずつ力が付いてきている事は感じていた。
まずは、レギュラーをとらなければ。
もう一年…優希を待たせる訳にはいかない。
その間に優希の気が変わってしまうかもしれない。
そう考えずにはいられなかった。