今、急いで電車に乗り込んだ。既に時間は5時をまわっている。帰りのサラリーマン達の流れに反んして上りの電車の中で横に、縦に揺られている。ここにいる理由はほぼ1時前にさかのぼる。
『実はな、彼女なんだが、あのあと無事に回復したんだそうだ』「えっ……そうですか………」突然の電話に驚きを隠せない。『彼女、過度の疲労による衰弱と元々低血圧だったらしく、いろいろな原因が重なってあんなめにあってしまったらしい』「は、はぁ……」今考えてみたらたしかに身体は衰弱しきっていたし、直感的にはインフルエンザかと思っていたが、時期はずれているし、ましては顔が赤くなることなんて滅多にない。
「とにかく彼女は無事なんですね」再度確認をする。『大丈夫だ。今日彼女の御両親に呼ばれてお見舞いにいってきたんだが、この前とは比べものにならないくらい明るい顔をしとったからな』そうですかとばかりに電話越しでうんうんと頷く。「わざわざありがとうございました。ではこれで失礼します。」と電話を切ろうとした時、『……あぁ!ちょっとまって!』と声がする。慌てて受話器を耳に戻すと、『大切なのはここからだよ』ん?とゆう感じについつい首を傾げてしまう。『実は彼女の御両親から直々にお見舞いに着てほしいと伝えてくれと言われたのでな』一瞬固まるがすぐに応答した。「そ、そんな!困ります!!ただでさえ他人のお見舞いになんか行った事ないのに……ましては女の子の見舞いなんて………」ついつい本音が口からこぼれる。『…プッ……ッ……ッ……』電話越に笑いを堪える駅長の姿が頭に浮かんで来た。『……そんなこと言わないでさ、行ってあげなよ。彼女の名前、宮本琴美って名だから。すぐわかるでしょ。』「いや、だからその……」『そうそう、面会時間は6時までだそうだから、うん、じゃ』「……ちょっと!!」
『プッ…………ツーーー………ツーーー……』
一方的に切られてしまった………。お前、なんかやらかしたのか?と言わんばかりにこちらを睨んでくる佐藤。そそくさと職員室を後にし、窓越しに陰っている太陽を見ていた。
こうしちゃいられないと考えた僕はすぐに駅に走ったというわけである。こんな説明をしている間に早くも目的の駅に到着。一度しか来た事ないのになぜか愛着がわく。そう、あの駅長のいる駅である。時間は5時半前。僕は急いで改札へと走った。