航宙機動部隊第二章・13

まっかつ  2007-04-27投稿
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連中のリーダー格、太子党の総帥・フーバー=エンジェルミに怯む様子はなかった。
調べた限りではリクより一つ上、大財閥エンジェルグループの御曹司にして、名門キーンネ侯爵家の第一後継者。
良く言えば繊細、悪く言えば神経質そうな危うさを感じさせる美貌をしていた。
クリーム色の頭髪は綺麗に長さが揃えられ、青い目にはあからさまな軽蔑の光が湛えられている。
純白の肌は妖しい芳香を放つ反面、艶には著しく欠け、無機質で生気を全く感じさせない。
外向きのスーツ一式はネクタイはなく、頭髪と同系統色をしていた。
端からは分からないが、さぞかし法外な値段なのだろう。
そのスーツの胸の辺りに観戦武官は、ハンドレイの狙いを定めながら、
『大人しく法に服せ。俺は外交官特権を帯びている』
『はっ、だから何だ?夷狄(野蛮人)めが』
偏見と悪意に深い皺が走るまで、その顔を引きつらせたフーバー=エンジェルミの癇に満ちた声は、リクの心臓を直撃した。
確かに中央域から見ればリク達は野蛮人なのだ。
だからこそ時として心ない対応を受けた事も一度ならず有ったが、それにしてもここまで剥き出しにされた差別意識を目の当たりにするのは衝撃を伴わない訳にはいかなかったのだ。
『今の狼藉は、映像にも撮られている。証拠・証人は幾等でもある!もう観念しろ、フーバー=エンジェルミ!』
じわりと胸に拡がる不快さに満ちたショックをひた隠しながら、リクは尚そう言ったが、
『証拠・証人?だから何だよ?まあ良いさ。どうやらこいつは妄想狂らしいな』
あのバーでの惨殺事件と同じ展開だ。
正論が又しても複数の嘲笑で存在否定されて行く。
『何い!?』
『今に分かるさ。銀河の中心がどこにあるのか。お前のイカれた頭の中とは、違うんだよ現実の世界は!』
その時、緑の制服の一団三0人ばかりが、徒歩でどかどかと乗り込んで来て、リクや太子党をぐるりと取り囲んだ。
船内警備の連中だ。
観戦武官はフーバー=エンジェルミを指差した。
『彼等を逮捕してくれ』
しかし、太子党の親玉の顔に浮かんだのは、会心の冷笑だった!
『…わっ、な…何をする!』
屈強な警備員六人にびっしり挟まれたのはリクの方だった。
『貴方を民間人殺傷の疑いで調べさせて頂きます』
一団の上司らしき男の口からはとんでもない言葉が少年に下された。



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