某月某日。
龍雅は隆也を連れ去った組織『革命教団』を捜し出すため、ゲンから受け取った名刺を頼りにある会社を訪れた。
龍雅(テクノアートインダストリー…一般事務系統の派遣から専門職の派遣までこなす業界中堅の会社だと聞いたことはあるが…)
龍雅はテクノアートインダストリーの40階建て本社ビルの高さに圧倒された。
龍雅(真っ当な商売はしていないな…これは)
スーツにトレンチコートという出で立ちの龍雅はゆっくりと歩を進めた。
他のサラリーマンがビルの回転ドアに吸い込まれるかのように中へ入っていく。
龍雅もその流れに逆らうことなくビルに入って行った。
中のエントランスは非常に広く、靴音が共鳴し合っている。
龍雅は真っ直ぐ奥の受け付けへと向かった。
花柄の洒落た制服の受け付け嬢が応対した。
受け付け嬢「いらっしゃいませ、どういった御用でございましょうか?」
龍雅は懐からおもむろにゲンから手渡された名刺を取り出した。
龍雅「この椎名瑠美という人物に会わせてほしい、事前にアポイントメントは取ったはずだが…」
受け付け嬢「椎名人事部長補佐ですね?失礼ですがお名前だけ伺ってもよろしいでしょうか?」
龍雅「峰崎で伝えてくれ」
受け付け嬢「畏まりました。少々お待ち下さい」
受け付け嬢はその名刺を受け取ると直ぐさま内線で問い合わせた。
しばらくすると話が終わったようだ。
受け付け嬢「峰崎様。お待たせ致しました。1番左奥の8番エレベーターで32階までお上がり下さいませ。そこで係りの者が対応いたします」
龍雅「ありがとう」
龍雅は硬い表情でエレベーターに乗った。
高速エレベーターのせいか少し乗っているだけで なんとなく体にけだるさを覚えた。
やがて32階に到達して合図のベルと共に扉が開いた。
扉の横から非常に身なりのいいスーツの若い男が現れた。
スーツの男「峰崎様ですね?存じ上げております。こちらへどうぞ」
男は龍雅を応接室と見られる所へ案内した。
スーツの男「しばらく、こちらでおかけになってお待ち下さい…では…」
スーツの男が部屋を出ると直ぐに白いスーツの女性が入ってきた。
龍雅は振り返ると見覚えのある人物がそこにいた。
龍雅「やはりお前か…」