公園のトイレ、鏡に
グシャグシャの髪に、マジックでおでこに、「Sex大好き」って落書きされた自分の顔が映って、涙がこぼれてきた。
こんな私じゃない、私になりたい。
虐められない、世界に行きたい。
ふって、鏡が揺れた気がして、ジッてみる。
気のせいかなあって、背中を向けたら、
「あんたって、相変わらずねぇ。」
後ろから、聞き覚えのある声。
ゆっくりと振り返ると
鏡の中の、私が、怒っていた。
綺麗な髪に、ピアス、顔に落書きなんてない!
「何びっくりしてるのよ。」ハァァァ、ため息をつく。
「どこの世界に行っても、ダメな奴。」
どこの世界?
「あんた、何回目?その度にさぁ、誰か、っていっても、あんただけど、呼び出されて、飛ばされるんだよね。」
苛々してる声。
飛ばされる?
「チッ、まあいいや、手出して。」
手?
鏡の中のあたしが、手を伸ばしている。
私は、無意識に手を伸ばす。
手は鏡を超えて、ユラユラと揺れた。
「次の世界は、ハードだよ」
ユラユラ揺れて、あたしが笑った。
「どうして!なんで!」
パトカーのサイレンが聞こえる。
公園のトイレ、
グシャグシャの髪に、
血だらけの私の顔が鏡に映って、笑った。
「ごめんねぇ。あんまり、私の事、つまり、あんたなんだけど、虐めるからさぁ、頑張って、堪えてたんだけどぉ、限界がきちゃってぇ、援交させられそうになったから、」
ニッ、って
「殺してってやった」
嬉しそうに、笑った。
私の足元には、めちゃめちゃに刺され、
血の海に、虫の息の、私を虐めてた、
奴が、いた。
「まっ、まだ生きてるし、後はよろしく。」
ユラユラ揺れだす。
「ま、待って!代わって、誰か、代わって。助けて!」
鏡に手を伸ばす
「来たばっかりじゃん、しばらく無理。」
ユラユラ揺れて、血だらけあたしが消えてゆき、
「虐められない世界を択んだんだのは、あんた、だよ」
手を振った。
鏡には、
青白い私の顔が、映って、
赤い、ライトが、クルクル、廻っていた。