6月
何日か雨が続いていた。
優希は合コンに参加していた。
特に、出会いを求めるつもりはなかったが、賑やかな、この雰囲気が好きだった。
大学の友人の早苗の高校の同級生で、大学生や社会人、ニートもいた。
その中の1人が優希の横に座り話しかける。
「優希ちゃんって、テニスするんでしょ?俺もテニス部だったんだ。今度、一戦どう?」
F工大の小林 亮司。キレイ系な青年。ちょっと、軽そう。
…優希の第一印象だった。
「うん。じゃあ、今度みんなでしよう。」
当たり障りのない返事をする。
「んじゃあ、携帯とアドレスおしえて。」
「いいよ。」
「二次会いこーっ!」
早苗がほろ酔い気分で次の店を探す。
「早苗っ。私帰るね。明日、1限からだから。」
優希が、駅に向かおうとすると、
「んじゃあ、俺も帰りまーす。一緒に帰ろ。優希ちゃん。」
亮司が駆け寄ってきた。
「んじゃあ、駅までね。」
「1人暮らしでしょ?物騒だから家まで送るよ?」
「平気。」
「俺、優希ちゃんの事、気に入っちゃった。」
「……へぇ…。」
「冷たいな…。彼氏いんの?」
「いないけど。亮司くんは好みじゃない。軽いし…。」
「ひでぇ…。俺、軽くないよ??」
「私、山手線だから。じゃあね。」
亮司はホームに向かって行こうとする優希の腕を引く。
「ちょっ…りょう…!!」
亮司は優希にそっとキスをした。
触れるか触れないか…
ほんの一瞬だった。
「やっぱ軽いし…。」
優希は、亮司をにらむ。
「優希ちゃんがちゃんと話を聞かないから。俺、本気なのに。」
「悪いけど興味ないの。亮司くんに。」
「待ってよ。優希ちゃん。」
再び、亮司は優希の腕をつかんだ。
平日の21時。
駅の構内。
「しつこいな……あっ…」
なんという、タイミングで君はそこに居合わせたんだろう。
「??…どした?」
優希は、人の波の中に航の姿を見つけた。
「航!!」
3ヶ月ぶりだった。