年に一度の誕生日の日がきた。
もう何回目になるのかは忘れてしまったけれど。
今日が私の誕生日だ。
でも、そう思えるのもあと数時間だけ。
一昨々年、私の誕生日を父と母と妹が祝ってくれた。
一昨年、母が死に、それでも父と妹が私の誕生日を忘れなかった。
去年、父が死に、しかし妹が私の誕生日を覚えていてくれた。
そして今年、妹が病院に運ばれ、あと数時間でその命が尽きようとしている。
私は自分が生まれた日を知らない。
生まれたその瞬間を覚えていない。
それでも私は、今日この日が誕生日だと断言できる。
何故なら、信頼する父と母が、私の生まれた日がこの日だと言ったからだった。
愛する妹が、私の誕生日をこの日と覚えたからだった。
しかし、信頼する二人はもういない。
今まで毎年欠かさず祝ってくれた妹も、もうすぐ死んでしまう。
あと数時間。
あと数時間経てば、私の誕生日を覚えている人はいなくなる。
あと数時間経てば、私の誕生日は今日だという確信が持てなくなる。
あと数時間経てば、永遠に私の誕生日は来なくなる。
私は永遠に歳を取らない。
何時までもこのままで停止して。
死ぬことなく。
変わることもできないで。
永遠に永久に永代に。
信頼できる人が現れ、私の誕生日を指定しない限り。
愛する人が私の誕生日を覚え続けない限り。
/The last Birthday.
-FIN-