「…昔、父さんと母さんは仕事がなくてスラム街に住んでいたんだ。そして、お前が母さんのお腹の中にいるとわかった時、母さんはお前を育てる自信がなくて、悲しむことしか出来なかったんだ。」
「それは、僕のせいなの?」
「いや、そうじゃない。お腹の中に赤ちゃんがいる人はたまにそうなっちゃうんだ。でも母さんは脚が不自由だから、すごく…すごく落ち込んでしまったんだ。そう、自らの命を止めようとするくらいにね…」
父さんは今の母さんからは想像できないような話をしてくれた。
その時、母さんが父さんの後ろで静かに話を聞いているのに気付いた。
父さんは母さんにも話を聞かせるようにまた話し始めた。
「でも、イルが生まれ時、母さんは変わった…まるで悲しみを無くしたかのように明るくなった。」
「…イル…お前は能力者だ。」