『この手紙、健司が自分が死んだら渡してくれ、って私に預けたものよ。』
彼のお母さんは、泣きやんだ私が手紙を受け取ると言った。
私は黙って手紙を開けた。
すぐに、彼の癖のある丸っこい字が目に入った。
【みぃへ。
みぃがこの手紙を読んでいるってことは俺、やっぱり死んだんだね。
悲しませてごめん。
この手紙にすべてを書くから読んでな。
実は、俺が記憶を失ったってゆうのは全部うそだった。
でもそれにはわけがあったんだ。
みぃと付き合ってからすぐに、ある病気にかかってて、あと少ししか生きられないと知った。
でも、どうしてもみぃにそんなこと言えなくて、時間はどんどん過ぎていった。
そして、入院前日になって本当のこと言うぐらいなら、記憶がなくなったってうそをつこうと決めたんだ。
そうしたら、みぃは俺のことなんて嫌になるだろうと思ったから。確かにみぃは傷つくだろうってわかってた。
でも、このまま俺が死んだとき、みぃが負う傷に比べたら、なんともないように思えたんだ。
情けない考えだけど、みぃを傷つけるのが怖かった。
俺は真剣だったんだよ。
実際、みぃは俺を見捨てなかったな。
びっくりしたし、嬉しかった。
何回か突き放そう、と思ったけど・・・、出来なかった。
俺に向けてくれるみぃの笑顔を失いたくなかったんだ。
本当にごめん。
俺のせいで倍悲しませた。
でも、後悔はしてないよ。
だって、みぃといた時間はどんなに体が辛くても楽しかったから。本当に、幸せだったから。】
私の目から涙が流れた。
私だって、楽しかったよ。
幸せだったよ。
【死んでから言うのも変だけど、みぃのことが大好きだよ。
でも、俺はもうみぃを幸せにすることは出来ない。
だから、俺のことを忘れろ!
そして、自分で新たな幸せをつかめ!
俺が言いたいのはそれだけだ。
絶対、幸せになれよ。俺の分までなっ。
・・・。みぃ、今泣いてるだろ。】
彼は、やっぱり私のこと、わかってくれる。
【最後だから言うけど、笑った姿が一番だった。けど、泣いた姿も俺は好きだったよ。
とても、綺麗だったから。みぃの涙。
ずっと、俺には勿体ないって思ってた。
そんな、綺麗な涙を俺のために流してくれてありがとう。
健司より】
次回、再終話です。