祇園のをんな 其三

椿  2006-02-14投稿
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数週間経った時には、先輩芸者からの咲菊に対するイジメはどんどん増えていった。

「何やの、コレ…」
咲菊は蒼白になった。自分の着物に、無数の針が刺してあり、ボロボロになっている。
またある時は、化粧道具を無くされたり、『落ちぶれ』と落書きされたりした。

だが、咲菊はこの程度のイジメだったらまだ耐える事が出来た。一番辛いのは、『言葉のイジメ』だった。

お座敷の時、廊下をすれちがった先輩芸者・藤吉に、ニコリと挨拶をしようとした。
「お姐はん(藤吉)、今晩わどすー」
「ふん、どうせうわべだけだとちゃうか?そや、いつ舞妓を辞めはるん?その内教えてや。」
『うわべや、おへん(ではない)そやし、(それに)、うちは、舞妓を辞めまへん…』
本当はそう言いたかった。が、後輩の咲菊は、何も先輩には逆らえないのだった。

今夜のお座敷で、事件は起こった。
酒の入った杯を客の前に運べと女将から言われた咲菊は、客と芸者の居る部屋へ向かった。前に立って居る藤吉に杯を手渡しをしようとする。が、藤吉は、わざと手を滑らせて酒を咲菊の着物の方へ溢した。
「ガッシャーン!」
「きゃっ!」
叫び声と割れた音が鳴り響く…。



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