僕は交通事故にあった。
信号待ちに痺れを切らして賭けにでた。
無論、事故らない方に。
失敗だった。
一瞬、身体中に激痛が走った。と思ったら僕は体から抜けた。
今、事故った“空”の僕を見下ろしている。
ボロ雑巾のようだ。
“・・・熱いよぅ”
どこからか声が聞こえた。生の僕は声の主を探す。
“熱い・・・熱い・・・”
・・・道路だ。車の急ブレーキで焼けた道路が喋っている。
“いってぇ。てめぇ突っ込んでくんなよ。グチャグチャじゃねぇか。”
ガードレールが言う。
死んだから?
こんな非現実的なことが目の前で繰り広げられているのに全く不思議と思わない。
“なんだよこの人間。赤なのに飛び出してくんなよ。お陰で俺、スクラップじゃねーか。”
“ほら見ろ。俺様が赤だって見せただろう?俺様に従わないからこうなるんだ。”
“おい、車。オレを見たか?ここ、法定速度50キロだぜ?飛ばしすぎじゃねーか?”
“うるせぇ!俺が運転するわけじゃねーんだぞ!運転手に言え!”
賑やかになってきた。
どうやら人間の声は僕には届かないらしい。
やがて救急車がきて、救急車が“死体なんか乗せんなよ。霊柩車の仕事だろ?”なんて抜かしやがった。
僕は死んだんだ。
「・・・たかや・・・たかや!」
取り乱した母が僕を呼ぶ。
あれ?僕、生きてるわ。
よかったぁ。
安堵した僕のすぐ下から聞こえてきた。
“よくねぇよ。てめぇが死んでくれやぁ俺の上で寝かせずに済んだんだよ。”