MURASAME

あいじ  2007-04-30投稿
閲覧数[547] 良い投票[0] 悪い投票[0]

雪女?

「あんた、雪女って知ってるか?」
俺は突然の質問に驚いたが、頷いた。なんだこいつ…妖怪研究家?
「実はな、この地方はでるらしいぜ?こんな吹雪の日は特にな…何でもたいそうな美人らしいが、言葉を交わすと死ぬらしい…」
吹雪の日に現れる…女…どこかで聞いたような…。俺が考えこんでいると、眼鏡の男が立ち上がり、暖炉から離れた。
「今日あたり、くるんじゃないか?」
不意に吹雪が強まった気がした。俺は眼鏡の男を見つめて言った。
「俺、もしかしたら雪女にあったことあるかも知れない」
眼鏡の男は興味深そうに俺を見据えた。レンズが炎で光り、表情がよめない。
「俺が小さい頃、親父とこの山に登ったことがあった。その日もこんな吹雪で…すると前から女が現れた…親父はみるなと言ったが俺は…見てしまった…その…女の顔を…」
俺は絞り出すような声で言った。眼鏡の男は冷ややかに俺を見つめた。そして、微笑んだ。
「そっか。あんたか…」
突然、扉の開く音がした。俺は驚き、扉の方を見た。しっかり閉じられていた扉は開けられて、大量の雪が部屋に入りこんでいる。外から何かが近づいてくるのが見えた。
「あんた、ここの雪女に気にいられたらしい…会ってやんな…」
雪女は扉の前で止まった。何故か俺は扉に歩み寄り、その顔を見た。
「美しい…」
俺は思わず呟いた。雪の中に浮かぶ顔が笑った気がした。
…俺の記憶はそこで終わっている。

「…またしょーもない仕事だったな」
山小屋で幸司が呟いた。その隣には天馬、そして雪女が座っている。
「文句ゆうな…雪女の縁結びだって立派な仕事だ」
天馬は足下で気絶している男を見つめた。雪女がはずかしそうに膝枕している。
「…よっぽど気に入ったんだな…」
雪女は頷き、顔を赤らめた。
「そいつ起きる前にとんずらしろよ…しかし…雪女に好かれた奴も珍しい…」
幸司が溜め息混じりに言った。

雪女 終

i-mobile
i-mobile

投票

良い投票 悪い投票

感想投稿



感想


「 あいじ 」さんの小説

もっと見る

ホラーの新着小説

もっと見る

[PR]


▲ページトップ