9月も終わりに近付いた頃、航からメールがきた。
《秋季大会の予選一回戦が10/14になったよ。場所はN競技場。11:00から。来てくれる?》
《うん。必ず行くよ。》
優希は、課題のレポートが手に付かなかった。
あと、二週間も航に会えない。
練習で大変なのも、毎日クタクタになっているのも解かっていた。
声だけでも聴きたい。
22:00
優希は航の携帯を鳴らした。
……コール音が鳴るが出ない。
おやすみの挨拶だけでいい。
声が聴きたい。
23:00
もう一度鳴らす。
………
出なかった。
切なくて、
苦しくて…
どうしようもない気持ちになる。
航が好きで好きでしょうがない。
涙が溢れた。
♪♪♪
優希の携帯が鳴った。
着信 阿久津 航
すぐに、出たいが、涙がとまらず、きっと声が震えてしまう…
そう思うと、通話ボタンが押せない。
30秒程なると、電話は切れた。
航…
5分程して、航にもう一度電話をかける。
……
『もしもし?優希??どした??ごめん、何度も電話くれたのに気付かなくて…』
やっと聴けた。
「航…」
『どしたの?優希、元気ない?』
優希って、ずっと呼んで欲しかった。
「ううん。そんな事ないよ。声聴きたかっただけなの。遅くに、ごめんね…。」
航…
『…いや。俺も、優の声聴けてうれしい。ありがと。おやすみ。優希。』
また、涙が込み上げてくる。
「……うん。…おやすみ…ね。」
声が震えないように必死に堪え、電話を切った。
いつから、こんなに航を好きになっていたんだろう。
四つも年下の男の子…
ついこの間まで彼の事をそう思っていた。
今では、こんなにまで愛しい存在。
航を愛している。
ピンポーン
チャイムが鳴った。
もうすぐ日付が変わる時間。
ドンドン!!
ドアをたたく音。
「??!」
「優希!俺!開けて!!」
航だった。