俺達は言われた通りそのホストに近づき、挨拶をした。
見るからにさえない、暗い感じのホストだ。
さっきの男から言われたことを伝えると
「じゃ俺のやるとおり見ながらやって」とぶっきらぼうに言う。
テーブルにクロスをはりキャンドルを置く。
そしてコースターを置きその上にグラスをセットする。
俺と一樹は見おう見まねで順番に各テーブルを移動していった。
先輩ホストに、新人は最初に店の準備からするのだと教わった。
まあそれはどこの世界も当然のことだろう。
準備をしながら気付いたのだがテーブルや床の絨毯、壁など結構汚れていた。
タバコのヤニやこげ痕だ。
あの時感じた、キンキラした華やかな店の中とはまったく違って見えたのでいささかショックである。
「ねずみやゴキブリも、その辺りをよく走っているよ」と、先輩ホストが言っていた。
そしてセッティングが終わり、先輩が各テーブルのチェックをした。
いくつかのテーブルが全然駄目だと言われ、間違い箇所をやり直した。
準備も終わり店がオープンする時間が近づいてきた。
緊張感が高まる。
続く