邪龍?
この世界を始めに支配していたモノは八首の蛇であったという。屈強な体を持つ彼らだったが、神に敗れ、その姿を消す。彼らはどこに行ったのだろう…。滅び去ったのか…。
それとも…。
風が潮の香りとともに寒波を運ぶ。夏であれば、多くの人で賑わう海も、冬となれば静寂が流れる。だが、その静寂を突き破るように声が響いた。
「へっくし!!」
「きったねぇな!こっち向いてくしゃみすんじゃねぇ!」
「わりぃ…」
幸司が鼻をすすりなが言った。心なしかいつもより厚着をしている。風邪でもひいたのだろうか。
「なぁ…こんな寒いとこに何がでんだよ…この前みたいにしょーもない仕事じゃないだろうな」
「心配すんな。蔵王丸さん直々の調査だからな」
天馬が海を見回す。だが、波が静かにさざめくだけだった。最近、この界隈でダイバーや漁船が行方不明になる事件が起こっていた。話によると巨大な蛇のようなものに襲われたらしい。それを調査するのが今回の仕事だった。
「何もいないじゃん…」
「愚痴るな…終わったら鍋でも食いに行こう…」
天馬がそう言い終わると同時に地響きが起こった。海が荒れ波狭間から巨大なモノが見え隠れする。幸司が羅喉を構え、引き下がった。
「きなすったか…羅喉!」
波を裂き、巨大な蛇が姿を現した。天馬が蛇を睨みつけ、正体を探った。
「データベースにない…?そんな!」
天馬が叫んだ。幸司は羅喉を構え、巨大な蛇に突撃した。
「気をつけろ!得体がしれんぞ!」
「まかせな!」
幸司はそう叫ぶと一気に相手の頭まで跳躍し、羅喉を振るった。だが、刃は弾かれ幸司は体勢を崩し、砂浜に落ちた。
「羅喉が…なら…これで!」
羅喉の刀身が砕け、光の刃が露出した。幸司は振りかぶると蛇の頭めがけ撃ち落とした。
「羅殺剣!!」