淡い泪 ?

ルイン  2007-05-02投稿
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 背筋が凍り付いてしまった。着信音を変えようとさえ思った程だ。慌ててマナーモードにする。

 携帯を開くと「新着メール」の文字。相手はご想像通り彼女だった。

 恐る恐るメールを開封してみるとなにも文字がない。困惑することしか出来なかった。空メールだと気付いたのはその5分後。自然と顔が青ざめてゆく。

 憶測ではあるが、相当キテいる証拠なのだと思い、また寒気がたつ。

 心の中は申し訳なさでいっぱいだ。この思いを相手に伝えるにはどうすればよいのかと考えてみる。今までの事、嘘で固めるか。いや、そんなことすれば罪に罪を重ねるだけだ。じゃあどうすれば……。

 気が付けば片足だけ靴下を履きながら冷たい廊下を全速力で駆け抜けていた。周りなんかどうでもいい。もう彼女しか頭にないのだ。

 六階まで自力でたどり着いている頃には息が上がり、喉がカラカラだった。目の前にはあの木製の大きな扉が自分を拒むかの様にそびえ立っている。しかも一段と気味が悪い。

 間もなく僕は取っ手を掴み、ノックもせずにいきよいよく扉を開いた。中は以前来た時に比べてとても暗く寒かった。人影が自分にはぼやけて見える。

 真昼の日の光を浴びながら風にそよぐコナラの木を見ている彼女がそこにはいた。いきなり入って来た僕の事なんか気にもせず、ベットの上で背を向けている。

 「ごめんなさいっ!!!」僕は真っ正面を向き、両足を揃えて深々と頭を下げる。これくらいしか出来ることが思いつかなかった。これくらいしか……

 「何しに来たの……?」ため息混じりの冷たく青い声。足が硬直してしまう。何も返事が出来ない。どうすることも出来ない。ただ頭を下げ続けているだけ……

 みしりとベットが軋む音とカラカラと点滴のかけてあるスタンドの車輪が回る音、スリッパが床と擦れる音。どんどん自分の方へと近づいて来るのがわかる。全てが苦痛でしかなかった。

 「遅い……」彼女がボソッと言葉を口にした瞬間、ピコッという軽快な音と共に頭に軽い衝撃が走った。「いっ………?」ゲンコツで殴ったにしては軽すぎるし、何よりあの音はおかしい。

 はっとして顔を上げてみる。そこにはしてやったりという感じにニヤケ、ピコピコハンマーを片手に持ちながら立っている彼女がいた。



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