暗いニュースで、ブルーな気分になったいつもの朝。
ブルーな気分のままにトーストを食べて、コーヒーを飲む。
「あっお早う。」
ベッドから同棲中の恋人が起きてきた。
「コーヒー飲む?」
「要らない。オレンジジュース頂戴。」
「はいよ。」
お揃いのマグカップに甘酸っぱい匂いの液体を注ぐ。
彼女はヒドい寝癖のついた頭を左右にゆっくりと揺らしている。
「昨日は何時に帰って来たの?」
「12時くらいかな。はい、ジュース。」
「ありがと。忙しいんんだ。」
僕は少し間を置いて。
「しばらくはこの調子かな。」
彼女は僕の向かいの椅子に腰を下ろした。
「そうなんだ。ところで話があるんだけど」
「話?あんまり時間ないよ。」
「じゃあ率直に言うけど、子供出来た。」
時が何秒か止まる。
「えーと今日は何曜日日だっけ?」
頭が混乱して自分でも訳のわからない事を言った。
「木曜日だけど」
彼女はにこやかに答える。
「めでたいな。」
「そう、おめでた。」
「今日は会社休むよ。」
「何で?」
「世界が輝いてるから。」
「はっ?意味わかんない。ねぇ産んでいいの?」
「俺は産んで欲しいよ。」
「私も産みたい。」
「じゃあ決まりだ。」「あっさりしてるねーこんなんでいいのかな?」
「いいんじゃないの。幸せなら。」
パン。彼女が突然手を叩いた。
「何してんの?」
「ほら幸せなら手を叩こうって歌があるじゃん。」
パン。
「俺も幸せ。」
「きゃははっ」
パン、パン、パン、パン。
二人の手を叩く音が部屋に響く。
幸せの音が部屋に響く。
起き抜けのブルーだった気分がどこかに吹っ飛んで行く。
ああほら世界はこんなにも輝いています。
パン、パン、パン、パン。
僕はこんなにも幸せです。