邪龍?
幸司は羅喉を大地に叩きつけた。その衝撃に砂浜の砂が舞い上がり、海を裂いた。だが、巨大蛇は身を翻し、その衝撃をかわした。
「もらった!」
天馬が波間から姿を現し、腕の剣を巨大蛇の両目に突き刺した。耳をつんざくような怒号が辺りに響き渡った。巨大蛇は身を振るわし、天馬を叩き落とした。
「今だ!やれ、幸司!」
「よっしゃぁ!」
幸司は海上に踊り出て、羅喉を構えた。両目のない巨大蛇は悶え、苦しみながら幸司の姿を探した。幸司は巨大蛇の死角に入り込み、巨大な首めがけて羅喉を叩き落とした。
「羅殺剣!」
凄まじい絶叫と共に蛇の首が切断され、赤黒い血が辺りを吹き出した。
「危なかった…」
二人は海から上がりお互いを確認した。二人は安堵の表情を浮かべたが、すぐにその表情が崩れた。切り落とした蛇の首が震えている。それに合わせる様に大地も震えた。
「なんだ…」
二人が構えるより早く、海上に新たな蛇が現れた。しかも一匹ではない。切り落とされたものも混ぜて、八つの首が海上に踊り出たのだ。
「…ばかな…まだこんなに…」
蛇は海上から砂浜に上がりその姿を見せた。天馬がその姿に衝撃を受けた。
「八匹の蛇じゃなくて…八つの首を持つ蛇…一つだけ首をだして海中から俺達を見てやがったのか…?」
八つ首の蛇は奇怪な雄叫びを上げるとその首を振り回し、辺りを吹き飛ばした。二人はどうにか回避し、体勢を立て直した。その時天馬が妙な事に気付いた。
「体内の熱量が上がってる…?まさか!」
気づくのが遅すぎた。次の瞬間、蛇の口から炎の塊が発射された。一つだけではない。七本の首全てから炎が発射され、代わる代わる打ち出される炎の前に二人は吹き飛ばされた。最後に天馬が見たのは羅喉を構えたまま崩れ落ちるように倒れる幸司の姿だった。