この大学を取り仕切る部としてマナー部があり、その部長として、私、岡野 正(オカノ タダシ)がいるわけだが、やはりここ最近の校内の雰囲気を乱しているのは、あの男・・・
「部長、また愚痴日記ですか」
潜め声でよく通る女声が正の日記執筆を止めた。
「ひ、人の日記を盗み見るのはマナー部としてどうかと思うぞ」
「すみません、ただ今は講義中なので日記を書くのはどうかと。マナー部部長として」
正はこの女性が苦手だった。
マナー部副部長、柳 凛(ヤナギ リン)だ。
講義が終わり、凛は先ほどの日記の内容を正に尋ねた。
「山ノ井 幸四郎(ヤマノイ コウシロウ)ですか」
「え?ああ、校内の雰囲気を乱しているのは間違いなく奴だ」
「もういい加減にしたらどうですか、ほのかさん目当てでしょう?」
宮岸 ほのか(ミヤギシ ホノカ)は幸四郎とよく一緒にいる、見かけは普通の女性だった。
しかし、大学入学当初から正はほのかに好意を寄せていた。
「それを奴が邪魔して・・・いや、それも無くはないが、違う。奴がしている“商売”に関してだ」
幸四郎もまた部長だった。
雑務部の。