ゴゥンゴゥン――
ジメジメとした生暖かい嫌な風が、錆びた鉄や鼻を刺すカビの臭いを運んでくる。
異臭おびた嫌な空気を纏って、古びたレールの上を無人の電車が駆けて来た。
「イコ、準備は良いか?
あいつに乗れば引き返すことは出来ない」
歳は20前後、短く切られ整えられた黒髪を掻き揚げて、彼は言った。
「大丈夫……俺たちなら確実にやれる……」
もう一人の少年は自分に言い聞かせるようにそう答えた。
けたたましい音を上げて、電車が二人の立つホームで停止する。
電車内には照明などは無く、まるで闇の中に溶け込むように二人の青年は乗り込む。
――両手に銃を、心に決意を宿して。