小旅行にも対応できる程度の黒いバッグは、中身が詰まっているのか、パンパンに膨らんでいた。言われるまま、両開きのチャックを恐る恐る引いてみると、そこには…。
百万円ずつくくられた札束が、一億円以上あるだろうか俺は膝の震えが止まらなかった。
(全てあなたに、差し上げてもいいわ)
婦人はそう言うと歩み寄ってきた。事の重大さに実感がもてず、ただボーとしてしまっているだけの俺に
(ただ私を満足させるのが条件よ)
ある程度の経験を重ね、ホストとして嫌であろうとも線の太い客(大金を使う客)とはババァであろうが肥満体であろうが、枕(セックス)してきたのだ。
まして見た所この婦人体の線も細く身長もあり、レースに包まれてはいるが想像するに決して女性としての魅力に欠けてはいない。
金と言う魔力に魂を捨て、モラルを忘れた男が一晩中この婦人を喜ばす事は吝か(やぶさか)ではない。
そんな思いが頭を過り目の前に光合しく光る札束に心を奪われた。
(分かりました。やらせてください)
この時開けてはいけないパンドラの箱、開けてはならない玉手箱に手をかけてしまった事は想像するよしもなかった…。
vol.6続く