過ぎゆく時の中で〜vol.6

真希  2007-05-05投稿
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緊迫した空気が漂う中でゆっくりと婦人は立ち上がり、目の前に来た。
俺を見下ろしながらストールを取ると、背中に手を回してドレスのチャックを下げた。
静寂が広がる部屋の中でその音だけが響いている。
線の細い腰をくねらせて黒いドレスから徐々に肌が露出されてゆく…。

薄暗い部屋を僅かに照らす間接照明から、婦人の裸体が現わになっていった。
(そ、それは…)

思わず声に出してしまった。女性を象徴する婦人の胸部から、腹部を見せられ、視線を反らせた。
(しっかり、見て!!)

それは、まるで放射能を浴びたかのように爛れ、胸部は原型を失い特殊メイクを施した感じにケロイド状が全身を覆っていた。
(なぜ生きているのか不思議でしょ?)

そう言うと、最後に残っている黒いレースの帽子に手を掛けた。顔半分は焼け、何度か手術を繰り返した形跡が見受けられる。
多分瞳は義眼だろう…
動いている形跡はなかった。言葉を失い、ただ呆然と座り震えている俺に、婦人は静かな口調で話始めた。

(まだ私だけこうして生きている。自分を戒める為に…)
vol.7に続く




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