航宙機動部隊第二章・21

まっかつ  2007-05-05投稿
閲覧数[446] 良い投票[0] 悪い投票[0]

『おおおっ…くっそおおっ!!』
荒れ狂う貴公子の怒りは、彼の手の及ぶ限りの物と言う物に原型を保つ事を赦さなかった。
無差別に投げ付けられた本の項や皿は破れ、ぶつけられた家具も欠けたり剥がれたりしない所とてなかった。
瓶から飛び散った香水や飲物が壁や床を無数の色でアートし、アルコールと芳香のミックスは本来の役目とは反対の刺激を、嗅ぐ物の目と鼻に喰らわせる。
そのただ中にフーバー=エンジェルミがいた。
『何で…何で、あんなやつ何かにいいいっっ!この僕がああぁぁぁっ!』
彼の破壊を押し留めるのに、洗練や高価さは何の力を持たなかった。
金切り声と共に巨大な花瓶が弾丸と化し、ステンドグラスと相撃ちになって、幾多の破片と花びらが乱舞した。
『…でも、今度ばかりは相手が悪いんじゃない?なんたって、共和国なんだろ?その夷狄君は』
だが、そこには他に同輩が二人ばかりいた。
どちらも慣れ切ってるのか、別に驚いた様子はない。
『ハミルトン!誰がこの僕に指図しろと言った!』
太子党の総帥は家具以前に己の相貌を激怒と逆上で無茶苦茶にしてたが、ハミルトンと呼ばれた青年は大して気にもしていないみたいだ。
『今の銀河で一割のパワーを持っているんだぜ?あの国。単体であれに勝てる勢力は星間軌道公社位でしょ?増して俺達諸侯でどうにかなる何て本気で思ってるの?』
『太子党を…否!この僕を侮辱したんだぞ!この高貴なる血筋をっ!野蛮人如きが!これが許せるのか?お前は赦せるのか!!』
『そうは言ってもねえ…』
『この僕を侮辱する事は則ち星間諸侯の鼎の軽重を問う事だ!血筋と家系こそこの宇宙の秩序だ!それを否定する奴等を殲滅するのが、そう…そうだ、この僕の使命なんだよ』
『やろうよ。面白そうじゃん♪』
部屋の片隅で丸椅子に座ったまま、しばらく黙っていた少女が、軽い乗りで喋り始めた。
『どうせヒマなんだしさ♪平民なんか何人殺しても関係無いし、パパが何とかしてくれるよ。だからやろうよ♪共和国宙邦との戦争、楽しそうじゃない?ねえエンジェルミ?』
『ああそうだ、ルクレツィア。やってやるんだよ。あいつも、あいつの祖国もこの僕が完全に消し去るのさ!この僕に逆らった奴は…この銀河に存在しちゃいけないんだ!』
妄想と狂喜にフーバー=エンジェルミの声と目は危険な彩りで満たされた。



投票

良い投票 悪い投票

感想投稿



感想


「 まっかつ 」さんの小説

もっと見る

SFの新着小説

もっと見る

[PR]


▲ページトップ