タダシーとは幸四郎が正を呼ぶときのあだ名であり、これを正はひどく嫌っていた。
「その呼び方をやめろ。ったく・・・・宮岸さんもこんなバカと居ると疲れるでしょう?」
ほのかはまだ恨めしそうに幸四郎を見ていた。
「と、とにかく、雑務部が何するのも勝手だが学校の風紀、雰囲気は乱すなって事だ」
そう言うと正は凛を連れ席を立った。
「あ、柳さん行っちゃうんですか、それじゃまた」
何の気なしに幸四郎が言ったことに凛はまた顔を赤らめ手を振って応えた。
凛もまた、幸四郎に好意を寄せていた。このままいけば三角関係だが、幸四郎は凛にもほのかにも気はないらしかった。
突然幸四郎が立ち上がった。
「宮岸くん、僕行くとこあるからそろそろ・・・」
「え!?や、山ノ井くんが講義と部活以外にすることがあるんだ!?」
「あ、ありますよぉ!失敬だなぁ〜!失敬!」
楽しそうに笑いながらエントランスから幸四郎は去っていった。
ほのかはひとりぽつんと残されてしまった。
「なによぉ〜〜・・・でも連れないところもまた、良いんだよなぁ〜、山ノ井幸四郎くんは」
ほのかはひとり不気味ににやけていた。