「………。」
繋ぎたいならそぅ言えよ……
「綺麗な月ね。」
ユカリの言葉に空を仰げば、見事な満月。
ってか月なんて久しぶりに見た。
普段空なんて見ないしな。
「すげぇ。」
思わず呟いた一言に、ユカリが静かに頷く。
思ったことをそのまま言葉にして――
その言葉を誰かが受け止める。
そんな当たり前のことがやけに新鮮に感じた。
俺って普段意外と無口なのかも。
思ったこと口にすることって、少ないかも。
「そぅね。」
「えっ!?」
驚いて見下ろすと、ユカリが軽く首を傾げ見上げてきた。
「すごいわね。満月。」
「あ…あぁ、月ね…。」
焦ったぁ〜〜まじで心読まれたかと思った!
ホッとしたからか緩む口元を見られない様にユカリの反対側を向く。
街灯が少ない一本道はやけに静かで、聞こえるのはユカリのヒールの音だけ。
その音に突然綺麗な歌声が混じった。
チラッと見下ろすと、月を見上げたままユカリが歌っている。
その語尾が微かに震えてる気がして、
「寒い?」
聞いてみたら、ユカリが目を丸くして見つめてきた。
「………なに。」
「リョウでもそんなこと聞くんだ。」
「悪いかよ。」
「ん〜ん。」