「学長はこの件をもみ消した。ということですか」
凛がエントランスで正に尋ねた。
「もちろん良くないが・・・俺達だけで終わらせた方が良い気もする」
そして凛が口を開いた。
「山ノ井幸四郎に会いましょう」
「ねーむれー、ねーむれー、はーはぁのーうーでーにぃ」
ほのかは幸四郎の背をポンポン叩きながら子守歌を歌っていた。
「み・・・宮岸くん・・・」
幸四郎の寝言を言い始めたので、ほのかは耳を傾けた。
「宮岸くん・・・・・・・・・うるさい」
「あ、ごめん」
しかしほのかはしつこく幸四郎の寝顔を見続けた。
幸四郎は嫌がったのか寝返りを打って反対を向いた。
「ちぇっ、だって子守歌が嫌いって言うから」
ほのかはいじけたが、拍子に携帯電話が光っているのに気づいた。二つ並べておいていた幸四郎の方だ。
「タダシー・・・ああ、マナー部部長の岡野さんか」
ほのかは勝手に電話に出た。
「もしもし、山ノ井です」
「そ、その声は、宮岸さん!」
「はい、そうですけど」
ふたりきりの時間を邪魔され、ほのかは少し苛ついていた。