「やられた……」重心を両足に預けたままうなだれる。「どっちがやられたよ!長い間ほっぽっといて!」僕が落ち込むやいなやすぐに態度を変えて怒って見せる彼女。
しかしながら手の込んだ悪戯だ。人の事は自分も言えないが……。周りにドッキリカメラでも仕掛けてあるのではないか?
「んで、そっちは何してた?」またすぐに態度が変わり軽快な口調で話しかけてくる。
「いや、これといって特に何も……」彼女は顔を見ただけでつまらないといった感じである。
「身体の方は大丈夫なんですか?」「病院にいて大丈夫だと思う?」コイツは人の心配というものを知らないのか?と本気で考えたが「あまり……」とだけ答えた。
見た目ではピンピンしているがまだ血圧が安定していないのだろう、素早くは動けなさそうだ。
ふと妙な事を思った。彼女は何故メールの主が僕だと分かったのであろうか。あのメールには馬鹿して差出人を表記していない。他の人からの可能性も十分に考えられる。
今自分が気になっている事を聞いてみることにした。「あの……」「何?」素っ気ない返事。「なんであのメールが僕だと分かったんです?」「知らないの?」「何が?」
「私の父親はここの病院の医院長なんだけど」
すぐには言っていることの意味が分からなかった。医院長?ということは……
「ハァ?」な…!?えっ…!?マジで!?……テンパる僕をよそに淡々と話しを続ける彼女。
「だから医院長だって。あなたが私を助けたときからあなたを父さんは知ってて、この病院に搬送されてきた時に私に知らせてくれたの。」
「しかも病院の中は元々電話使用禁止でしょ?あなたのご両親が携帯を使うとは考えづらいし、個室のあなたは周りに人がいないから平気で使う可能性は高い。」
ポカンと話を聞くしかなかった。「それに意識が戻る時間帯も大体把握してたから」
見た目以上に頭がキレると痛感した。何なんだ?この家族は……
「それと………」「それと?」まだあるのか?しかしよく考えてみると今までの説明は僕だと目星を立てていなければ出来ない推理だ。他の知り合いという可能性は現段階では捨て切れない。
しかし次の言葉で確実と言っていいほど、差出人が僕だと分かる。「私……あなたしか知り合いいないから……」