邪龍?
天馬が出雲に来て一週間が経った。いまだに修行は終わらないのか二人の姿すら見らんない。
(間に合うだろうか…?東京じゃ邪龍の被害が広がりつつある…)
天馬は焦っていた。淡い期待を持ちつつ再び、美優の実家に向かうといつもと様子が違っていた。
「なんだ…どうしたんだ!」
天馬が見ると、奥座敷は開け放たれ、そこに美優と彼女の祖母が倒れていた。
「…あ、安藤殿、修行は無事修了しました…美優を連れていってください…」
美優の祖母はそれだけ言うと気絶するように眠った。
天馬は隣で倒れている美優を抱き起こして彼女に言った。
「美優ちゃん…なにがあったの…?」
「…もう5日も寝てないんです…東京戻るまで寝かせてください…」
そう言うなり美優は眠りこんだ。天馬は呆れつつも彼女をおぶり、とりあえず本部に連絡を入れることにした。
『…司…幸司…』
幸司はまどろみのなかでうめいた。自分を呼ぶ声でふと目を開けた。
「だれだよ…俺はまだ眠いんだ…」
そう呟いて幸司は目を見張った。そこにいたのは紛れもない、幸司の知りうる人物だったからだ。
「し…師匠…」
幸司が手を伸ばすがその姿はまるで闇に溶けるように消えていった。
幸司が目を覚ましたのは本部の病室だった。一瞬、なにが起こったのか理解できず、辺りをキョロキョロと見回した。
「幸司くん!」
ふと入り口を見ると咲子が立っていた。彼女は幸司に駆け寄ると抱きついた。
「よかった…目が覚めたのね!」
「ちょっと…咲子さん…恥ずかしいんすけど…」
幸司の顔が真っ赤になっていくのを見て、咲子は優しく微笑みを浮かべた。